ああ、「ひゃっけん」と打つと、「百閒」とすぐに変換されました。
有名な人なんですね。娘が例の古本屋で買ってきた(ほかにも数冊、ついでに図書館でも数冊借りてきて何冊も読みかけの本がある・・・私ならこういう時には自分の定位置数か所にそれぞれ置いてその都度ちょっと読んだりして、面白いと用事そっちのけで読んだりしてまあこれが遺伝したとみえる)ようだが手にとってみると面白い。抱腹絶倒とうたい文句にある。
「阿房列車」というのは百閒が、「何も用事がないけれど汽車に乗っていろいろ感想を持つ」という紀行文。
ただ読んでいるだけで「なんか面白いな、これ。」という気持ちになります。
毎日が退屈な人のためにこんな抜粋。
山系が隣からこんな事を云い出した。
「三人で宿屋に泊まりましてね」
「いつの話」
「解り易い様に簡単な数字で云いますけれどね、払いが三十円だったのです。それでみんなが十円ずつ出してつけに添えて帳場へ持って行かせたら」
蕁麻疹を掻きながら聞いていた。
「帳場でサアヴィスだと云うので五円まけてくれたのです。それを女中が三人の所へ持ってくる途中で、その中を二円胡麻化しましてね。三円だけ返してきました」
「それで」
「だからその三円を三人で分けたから、一人一円ずつ払い戻しがあったのです。十円出した所へ一円戻って来たから、一人分の負担は九円です」
「それがどうした」
「九円ずつ三人出したから三九、二十七円に女中が二円棒先を切ったので〆て二十九円、一円足りないじゃありませんか」
蕁麻疹を押さえた儘、考えてみたがよく解らない。~略
※第一阿房列車 内田百閒 福武書店(東京)1991年 39~40ページ
娘にきいてみたら「それ、ほかでもきいたことある」と言われました。面白いと思ったんですけどね。